私の通常の業務エリアは、岩手県の沿岸南部に位置し気仙地区と呼ばれており2市1町(大船渡市・陸前高田市・気仙郡住田町)を担当しています。
担当地域の特色としては漁業・林業・観光と自然豊かな地域でしたが、この度の震災により状況は様変わりしてしまいました。
震災直後より顧客の安否確認や支援に奔走していましたが、情報の寸断やライフラインの復旧に3カ月ほどかかり、私ども従業員も被災しているため、難聴の皆様の為にどこまで何ができたのか・・・一人の人間の限界を痛感しました。
現在(2011年8月)は仮設住宅もほぼ完成し、避難所から仮設住宅に移られる方がほとんどです。生活は少しずつではありますが落ち着いてきているように感じます。そのような状況の中、避難所生活(団体生活)を通じ難聴を意識される方も数多くおられます。災害時に情報を集めようにも難聴のために正確な情報の把握ができず危険な状況に陥ったといったお話もよくお聞きしました。
また、私たちも被災直後から補聴器の支援を実施していましたが、中には支援と称し聴力測定なども行わず適正な補聴器提供を行わない業者があり対応に困った記憶もあります。
お客様の話に熱心に聞き入る岡本さん
認定取得までの8年間で得たもの
私が認定補聴器技能者を目指したのは、先輩職員が全員資格を取得しており、自然と認定補聴器技能者になるものと思っていました。補聴器販売に携わるものとして必要な資格と認識していました。しかし実際に始めてみますと、通常業務と並行しながらでしたので、ポイントを取得するための講習会などに思うように参加ができず、取得まで長い時間を要しました。しかし期間が長い分、補聴器を取り巻く環境が変化しており、その都度新しい情報を吸収でき勉強になりました。
私の接客の心がけは「聞き役に徹する」です。とにかくお客様のお話しを聞くこと、お客様が納得するまで訴えをお聞きすることを心がけています。資格を取る前と今で、自分の中では特に大きく変わったことはないと思っていましたが、先生など周囲の方がたからご期待の声をいただき、より日々の業務に取り組む姿勢が変わったようにも思います。
震災への思いを胸に仕事に打ち込む岡本さん
復興地の認定補聴器技能者として
今回の震災で多くのお客様がお亡くなりになりました。今思う事ですが、一人一人のどのお客様も印象に残っており、もう少し何かできなかったのか? こうすれば満足度は上がったのではないか? と後悔することもあります。復興まで何年かかるかわかりませんが、被災地での補聴器の適正な供給を実現して、聴力障害というハンディキャップに負けない明るい社会を実現し、そして後悔の無いように復興地の認定補聴器技能者代表として日々の努力を続けていきたいと考えております。
補聴器は、何より大切なライフラインの一つ
今回の震災で、聴こえ=補聴器は“ライフラインの一つだ!”と強く実感しました。情報は色々な感覚が必要だと思いますが、耳から入る情報は何よりも不安を取り除き、いち早く情報を伝え判断する大事な役割を果たしてくれると思いました。補聴器の仕事を始めたころの感激と喜びと不安は時間とともに忘れがちでしたが、今回の経験を機に、より多くの聴こえでお困りの方のために、喜びを感じていただけるように努力しなければと改めて思いました。
これから認定補聴器技能者の資格取得を目指す方は、補聴器は何より大事なライフラインであること自覚して、日々お客様に接してください。そして、聴こえでお困りの方の為に適正な補聴器をおすすめいただきたいと思います。
最後に、今回の震災に際し多くの方から支援や励ましのお言葉を頂戴しました。感謝申し上げます。ありがとうございました。
おわりに
「認定補聴器技能者」の役割、大切さを実感していただけましたでしょうか。幅広い知識や秀でた技能だけでなく、認定補聴器技能者になるための「5年間」の頑張りを支えた思いや理念はきっと、みなさまの補聴器ライフに大きな安心感をもたらすことでしょう。