私が補聴器販売という業を腰を据えて全うしなければならないと思ったのは、小児難聴にかかわったのがきっかけです。もう30年近くも前になりますが、私が聾学校の子供さん達の補聴器担当で、仮フィッティングをして初めて音入れをした時のことです。膝に抱かれたお子さんにお母さんが呼びかけた瞬間、お子さんがお母さんの顔の方を振り向いて『ニコッ!!』と笑顔を見せました。それを見たお母さんが涙ぐんでおられたその光景は今でも脳裏に焼き付いています。仕事で躓いた時など、時折思い出しては自分を奮い立たせています。
その後、目の前にいる聴覚に障がいを持った小さなお子さん達(難聴児)、この子達の聞こえの手助けができるように、聾学校の先生や親御さんと一丸となってお子さんの聴覚訓練に取り組ませていただくようになり、自分はとにかく聞こえと補聴器についてスペシャリストを目指さなければならないと思い、夢中で知識・技能の研鑽に励みました。そんな折のこと、教育現場や医療現場の方などから『何か資格はあるの?』と問われ、仕事に自信はあるものの、そのレベルなどを示す基準になるようなものが何もないことに唖然とし、認定補聴器技能者資格を取得することにしたのです。資格取得はかなり前のことなので今のカリキュラムとは違うのですが、補聴器販売における接客ロールプレイングを他の受講生とグループで行ったことが特に印象に残っています。年に一度の集合講習は楽しくもあり、また良い経験として思い出にもなりました。元々補聴器販売に関しては、知識や技能の劣った者や自分自身の利益しか考えられない者は関わるべきではないと思っていましたが、同志と交流することにより更に「認定補聴器技能者」の名に恥じないような仕事をしなければならないという責任感や倫理観をより強く感じるようになった気がします。