認定補聴器技能者インタビュー

認定補聴器技能者 青戸 義彦さん(1997年取得)
今年度3人目となる技能者インタビュー、今回は北海道で補聴器販売店を経営されておられる青戸さんにお話を伺いました!青戸さんは35年間補聴器販売に携わり、現在、一般社団法人日本補聴器販売店協会の役員として、認定補聴器技能者養成課程等で講師も務めています。
認定補聴器技能者を目指した理由や補聴器販売に対する熱い想いを早速聞いてみましょう!

認定補聴器技能者
青戸 義彦さん(1997年取得)

私が認定補聴器技能者になったきっかけ

私が補聴器販売という業を腰を据えて全うしなければならないと思ったのは、小児難聴にかかわったのがきっかけです。もう30年近くも前になりますが、私が聾学校の子供さん達の補聴器担当で、仮フィッティングをして初めて音入れをした時のことです。膝に抱かれたお子さんにお母さんが呼びかけた瞬間、お子さんがお母さんの顔の方を振り向いて『ニコッ!!』と笑顔を見せました。それを見たお母さんが涙ぐんでおられたその光景は今でも脳裏に焼き付いています。仕事で躓いた時など、時折思い出しては自分を奮い立たせています。

その後、目の前にいる聴覚に障がいを持った小さなお子さん達(難聴児)、この子達の聞こえの手助けができるように、聾学校の先生や親御さんと一丸となってお子さんの聴覚訓練に取り組ませていただくようになり、自分はとにかく聞こえと補聴器についてスペシャリストを目指さなければならないと思い、夢中で知識・技能の研鑽に励みました。そんな折のこと、教育現場や医療現場の方などから『何か資格はあるの?』と問われ、仕事に自信はあるものの、そのレベルなどを示す基準になるようなものが何もないことに唖然とし、認定補聴器技能者資格を取得することにしたのです。資格取得はかなり前のことなので今のカリキュラムとは違うのですが、補聴器販売における接客ロールプレイングを他の受講生とグループで行ったことが特に印象に残っています。年に一度の集合講習は楽しくもあり、また良い経験として思い出にもなりました。元々補聴器販売に関しては、知識や技能の劣った者や自分自身の利益しか考えられない者は関わるべきではないと思っていましたが、同志と交流することにより更に「認定補聴器技能者」の名に恥じないような仕事をしなければならないという責任感や倫理観をより強く感じるようになった気がします。

聞こえの不自由な方々と共に歩む

聞こえにご不自由を感じていらっしゃる方々(難聴者)の不自由さや辛さは計り知れないものがあるのではないかと思います。ですから補聴器販売に関わるもの全ての者はユーザー目線に立ち、お客様の訴え一つでも聞き逃すことのないよう最善の注意を払い、その訴えに真摯に取り組まなければならないのではないでしょうか。つまり難聴者の方と肩を寄り添うような、二人三脚で進んで行けるような、そんな姿勢で取り組むことが望ましいのではないかと思います。

ある時お客様からお電話で、補聴器が壊れてしまったから今すぐにでも見てほしいとのご連絡がありご来店いただきました。さっそく補聴器を確認しようとしましたところ、ケースに入っていたのはなんと補聴器ではなく甘露飴でした!!お話を聞くと、夜中に咳き込んで目が覚めてしまったので、飴玉を舐めて飲み込まないようにオモイッキリ噛んだところ、バリッと鈍い音がして、ンンッ?と思って出してみたら、飴玉ではなく自分の耳穴式補聴器だったとのことでした。この理由にもビックリですが、しかも今度は慌てたせいか補聴器ケースに飴玉を入れて来てしまったというのにも二度ビックリ。ご連絡をいただいてからご到着されるまで、補聴器がどれくらい破損しているのか、修理で直るのか等対応を思案しつつ、緊張感を持ってケースを開けた時の脱力感(笑)。お客様とともに焦ったり、笑ったり、泣いたり、補聴器販売にはお客様一人ひとりの物語があり、日々それに寄り添っていることを実感した出来事でした。ちなみに、その後補聴器は無事修理をして使用可能となりました。

補聴器技能者は補聴器に魂を吹き込む人である

目の前の補聴器(特に現代のデジタル補聴器)は何も調整しなければ集音器にも劣るものかもしれません。しかしながら、この補聴器をユーザーの聞こえときこえの感覚に合わせて調整していくことで、難聴の方にとって無くてはならない体の一部とも言えるものとなります。そして日々の聞こえの質の向上が図れることにより、より良い聞こえの生活を楽しんでいただけるのではないでしょうか。だからこそ、認定補聴器技能者は確かな知識と技能を持ち、高い倫理観を持ってガイドラインに則った補聴器フィッティングを心掛け、常に難聴者(装用者)の聞こえの質の向上を念頭に業務に当たっているものと思います。

これから認定補聴器技能者を目指す方へ

公的資格ではなくとも業界として社会的に良い意味で知名度を上げるためには、消費者や難聴者の方々へ安全で安心な補聴器の適正供給を行うこと、これこそが私たち補聴器販売に従事する者の役目であり責任だと思います。それには補聴器技能者として、一定レベルの技能と高い倫理観を持つことが必要であり、これは業界として統一性(知識・技能・倫理)のある物でなければなりません。

なぜならそれが、消費者(難聴者の方)が補聴器を購入する場合において何処のお店で補聴器を求めたら良いのか大変分かりやすくなるからです。そうしたことから、認定補聴器技能者という資格は、補聴器を扱う全ての方に最低限必要な知識・技能の習得を目的としています。また資格取得後も協会に所属し情報を得ることで、補聴器販売における技能や知識の研鑽を図り続けることができるのは大きな利点と言えるのではないでしょうか。

近頃“にわか技能者”とか“なんちゃって技能者”などと呼ばれるようなレベルの低い販売者も散見されます。今こそ自らを戒め、安全で安心な補聴器の適正供給がなせるよう日々知識と技能の研鑽に努めるべきではないかと思います。
おわりに
協会では今年度からHHP研修会をオンラインで実施し、場所を選ばす多くの方にご参加いただくことができるようになりました。コロナ禍においてもスキルアップの機会を皆様にご提供できるよう準備して参りますので、“Everyone Skillup!”を合言葉にこれからも研鑽を積んでいきましょう。

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